トライアスロン競技において、バイク種目の重要な役目を果たすシンボルともいえる、DHバー(エアロバー)。DHバーをバイク(自転車)に装着することで、前傾姿勢をとることが可能になるため、速度の上昇や疲労の分散など、過酷なレースを切り抜けるためのさまざまな効果を期待することができます。ですが、DHバー(エアロバー)はただ取り付ければ良いというわけではなく、自分に合ったものを選ぶ必要があります。今回は、DHバーの種類や選び方などについてご紹介させていただきますので、ぜひ、参考にしてみてください。
「DHバー」はダウンヒルバーを略した言葉で、「エアロバー」とも言われています。バイク(自転車)のハンドルバーの真ん中に取り付けることで、肘を乗せることができるため、極端な前傾姿勢になり、空気抵抗を減らすことができます。トライアスロンでは、基本的に、前で走る人の後ろにつくことで空気抵抗を減らすドラフティングという行為が禁止されているため、DHバー(エアロバー)は、トライアスロンレースやTTレースでよく使用されるパーツになります。(ドラフティングが認められているロードレースでは、DHバーの装着は禁止されています。)
DHバー(エアロバー)を装着することで、以下のようなメリットがあります。
DHバー(エアロバー)に肘を置き前傾姿勢をとることで、前面投影面積(CdA)が減るため、空気抵抗が減少します。これにより、同じ出力でも平均スピードを向上させることができます。
前傾姿勢になることで重心が前に移動し、ペダルに体重をかけることができるため、スピードの向上に繋がります。また、お尻の痛みを軽減することもできます。ただし、DHバー(エアロバー)は、お尻の痛みを軽減させることが目的のものではないため、パッド入りのパンツを使用するなど、他の対策も考えるようにしましょう。
ドロップハンドル(ロードバイク)の場合、ハンドルを持つ位置は、基本的なポジションである「ブラケット」、上り坂での「上ハンドル」、加速するための「下ハンドル」の3か所しかありません。ですが、DHバー(エアロバー)を装着することで、もう一つポジションを増やすことができます。特に長距離でのレースでは、同じ筋肉をずっと使うわけにはいかないため、それぞれ使う筋肉が異なる4つのポジションをシーンに応じて使い分けることで、走行中の身体の負荷を分散させ、レース中に疲労が蓄積してしまうのを防ぐことができます。
DHバー(エアロバー)を装着することで、バイク(自転車)の見た目の印象が変わります。プロのトライアスリートが使用しているということもあり、楽な姿勢をとれることはもちろんですが、見た目のかっこ良さでもDHバーに憧れる方は多くいます。
特にロングライドの場合は、ずっとハンドルを握ることになるため、手のひらにも負担がかかりやすくなります。DHバー(エアロバー)を使用すると、肘に荷重がかかることになり、手は軽く握るだけで済むため、手のひらへの負担を軽減することができます。また、肘を乗せる部分のパッドは面積が広いため、荷重を分散させることができます。
DHバー(エアロバー)にはさまざまな形状のものがありますが、ただ取り付ければ良いというわけではありません。それぞれの特徴を理解し、ポジションや身体の柔軟性、出場する大会の走行距離などを踏まえ、自分に合った設定にすることで、はじめて効果を発揮することができます。
スキーベンド(SKIベント)タイプは、エクステンションバーのグリップ部分が上に湾曲している形状のものです。手前に引くような握り方をするため、力をかけやすくなっています。ハンドルとサドルの位置が同じくらいのポジションである場合や、身体の柔軟性があまりない方、長距離のトライアスロンレース時などにおすすめです。手首はまっすぐな状態で、バーを自然に握ることができるため、楽な姿勢でありながら、スピードが出やすいといった特徴があります。スキーベンド(SKIベント)タイプは、プロの選手の中でも使用率が一番高いとされています。
Sベンドタイプは、エクステンションバーのグリップ部分を横から見た時、「S」のように緩やかに湾曲した形状となっているものです。
手首が伸びてこぶしが下を向いている状態になります。ハンドル位置がサドルよりも低いため、スキーベンドタイプより前傾姿勢になり、肘をパッドに押さえつけ腕を固定するため、ペダルに力を入れやすく、短距離のトライアスロンレース向きとなっています。
ドロップベンドタイプは、エクステンションバーの途中がくぼんでいる(ドロップした)形状のものになります。先端を握ればスキーベンドタイプのように、くぼんでいる部分を握ればSベンドタイプのように、両方に近い持ち方ができるため、状況に合わせて対応することが可能です。ポジションが定まっていない方にもおすすめのタイプになります。
ストレートベンドタイプは、エクステンションバーに角度がついていない、まっすぐ伸びた形状のものになります。グリップ部分が低い位置にあるため、DHバー(エアロバー)の4つのタイプの中で最も前傾した姿勢となり、空気抵抗を最も減らすことができます。身体の柔軟性が高い方や上級者の方、短距離のトライアスロンレースにおすすめです。エクステンションバーの75cmルール導入がきっかけで使用率が減ってきているとされていますが、現在では、サドル5cmルールとエアロバー75cmルールのどちらかを、身体形態上の理由で免除を申告することも可能になっています。
自分に合う形状のDHバー(エアロバー)を選ぶためには、バイク(自転車)のハンドルの高さとサドルの高さにどのくらいの差があるか、サドルの前後の位置、乗車姿勢、ポジションなどを確認しておくようにしましょう。
DHバー(エアロバー)は素材選びも重要です。バーの素材には、「カーボン」と「アルミ」の2種類があります。
「アルミ」素材のバーは強度があり、安価のため、初心者でも購入しやすくなっています。しかし、衝撃吸収性が悪いため、路面からの振動や衝撃が伝わりやすいといったデメリットもあります。
また、「カーボン」素材は「炭素繊維強化プラスチック」のことで、軽量でありながら強度があり、路面からの振動や衝撃を繊維が吸収してくれるといったメリットがあります。ただし、デメリットとして、高価であるうえに、万が一ぶつけてしまった場合、ヒビが入ったり割れたりしてしまう可能性が高いため、よくバイク(自転車)を転倒させてしまう方は、扱いに注意する必要があります。
DHバー(エアロバー)は、作りが頑丈で、良い素材を使用しているからこそ価格設定が高いという製品も多くありますが、逆に、あまりにも安価なものを購入してしまうと、塗装が剥がれやすいものだったり、プラスチック製で壊れやすい製品だったりすることもあります。特に体重がかかりやすい肘置きの部分が割れるといったトラブルが走行中に起きてしまうと、大きな事故に繋がる危険性もあります。もちろん、DHバーを選ぶポイントは価格だけではありませんが、低価格だからといった理由だけで購入するのは避けるようにしましょう。
画像引用元HP:楽天市場公式サイト
(https://item.rakuten.co.jp/mapsports-syuppin/4712123803760/)
アルミ素材。31.8mm径のハンドルに取り付けできるミニサイズのDHバー(TTバー)です。170mmの突き出しは固定式で、ロング・ディスタンスでも疲れにくい、新しいデザインのアームレストパッドを採用しています。トライアスロンレースやTTレースで活躍したい方に。
画像引用元HP:楽天市場公式サイト
(https://item.rakuten.co.jp/auc-fleet/dh-dedaparabolica/)
素材は「6061アルミ」。「ゼロ(0)」はストレートベンドタイプになります。アームレストは固定穴が多いため、前後に45mm、左右に35mmの調整が可能となっています。左右アームレストパッド付属。
画像引用元HP:楽天市場公式サイト
(https://item.rakuten.co.jp/auc-cycle-parts/hcb-31/)
素材は「6061/T6アルミ」になります。長時間のライドに最適な、ストレートタイプのDHバー(エアロバー)です。全長335mmで、+80mm、-80㎜の調節が可能。ワイヤーホールがあるクリップオンバー31.8mmに対応しています。シンプルなデザインでありながらしっかりとした作りになっています。
画像引用元HP:Amazon公式サイト
(https://www.amazon.co.jp/Lixada-カーボンファイバーロードバイク自転車エアロバー-レストハンドルエアロバー-31-8mm/dp/B01EIZO3ZA?th=1)
素材は、超軽量でありながら、高品質で耐久性のある「カーボンファイバー」。Sベントタイプで、直径31.8mmのハンドルバーに適しています。特にスピード重視のトライアスロンレースや、快適さを求めるツーリングライダーに最適です。
画像引用元HP:Amazon公式サイト
(https://www.amazon.co.jp/PROFILE-DESIGN-プロファイルデザイン-カーボン-334090001/dp/B01KUB7URO)
素材は「6061-T6アルミブランケット+カーボンエクステンション」。ドロップベンドタイプのDHバーです。直径31.8㎜のハンドルに対応しています。先端は握りやすくなっており、突き出しの長さ・角度・幅は自分に合わせて調節が可能です。
画像引用元HP:楽天市場公式サイト
(https://item.rakuten.co.jp/auc-fleet/dh_t4pluscbn/)
素材は「6061-T6アルミブラケット+カーボンエクステンション」。新設計のJ5ブラケットはエアロダイナミクスとポジションの微調整も簡単にでき、先端部分は指がかかりやすい形状になっているため、握りやすく、短距離レースから長距離レースまで幅広く対応することができる、SKI(スキー)ベンドタイプです。ボルトが天面に露出しないことから、汗が原因のボルトの腐食も抑えられます。
①DHバー(エアロバー)を、地面と水平になるようにセッティングします。DHバーには、エクステンションバーがハンドルの上から出るタイプと、ハンドルの下から出るタイプがありますが、基本的に、セッティングする位置はどちらも同じになります。ただ、エアロポジション時の腕の高さが変わってしまうため、取り付けるバイク(自転車)のハンドルの高さなど、バイク自体の調整も必要となってきます。また、DHバー(エアロバー)をセッティングする際、あえて前下がりに取り付ける方もいますが、そうするとバランスがとりにくくなり、落車してしまう危険性があるため、地面と水平の位置を基本とするようにしましょう。
②セッティング後、バーの突き出しの長さや角度、バーとバーの間隔、肘を置く部分(アームレスト)の前後の位置などの調整を行っていきます。どこまで細かく調整できるかは製品によって異なりますが、自分の納得のいくポジションを見つけるまで調整していくようにしましょう。また、あまりいないと思いますが、車輪からはみ出てしまうほどバーが長いと、道路交通法違反になってしまう可能性があります。見た目もあまり良くないため、適度な長さに調節するようにしましょう。
③バーの突き出しの長さやアームレストの高さなどは、力の入れやすさなどにも関わってきます。DHバー(エアロバー)初心者の方は、実際に走行しながら微調整を行い、一番良いポジションはどれかを探っていくようにします。この時、サイクルコンピューター等を使用するのがおすすめです。
④肘の間隔は狭いほど空気抵抗が軽減されますが、肩幅より狭くなってしまうと呼吸が苦しくなってしまうため、ちょうど良い幅でセッティングするようにします。
まず、バイク(自転車)練習を始めるにあたり、ヘルメットやサングラス、シューズ、パッド入りのパンツなどは揃えておくようにしましょう。かなり速いスピードで走行することになるため、万が一転倒した際に大怪我を防ぐことや、目を保護するためにも、ヘルメットやサングラスの装着は必須になります。また、バイク(自転車)にビンディングペダルを使用している場合は、ビンディングペダル専用のシューズを使用することになります。さらに、漕いでいるうちに、お尻などのサドルに当たる部分の痛みも気になってくるため、パッドが入ったサイクルパンツも必ず着用するようにしましょう。
DHバー(エアロバー)を使用すると、エアロポジションにより空気抵抗が減り、スピードが安定・上昇するだけでなく、効率よくペダリングできるため、パワーロスを防ぎ、体力を温存することができます。しかし、DHバーは休むことが目的のものではないため、走行中、休憩のつもりでDHバーに寄りかかるような感覚で体重を預けてしまうと、エアロポジションによるエアロ効果は発揮できても、ペダリングの効率は悪くなり、DHバーがマイナスに働いてしまうことがあります。しばらくDHバーを装着して練習を行っていた方は、たまにDHバーを外して、ライディング姿勢を見直すようにすると良いでしょう。
DHバー(エアロバー)のハンドルバーは、そのまま握るよりも、「バーテープ」を使用するのがおすすめです。「バーテープ」は、バイク(自転車)などのハンドル部分に巻くテープのことで、汗や雨で手が滑りやすくなるのを防ぎ、ハンドルを握りやすくする役割や、クッション性があることで振動を吸収し、手が痛くなってしまうのを防ぐといった効果があります。特にロングライド時は、バーテープを巻くことでハンドルに手がフィットしやすくなるため、運転操作性の向上にも繋がります。
バーテープには厚手タイプと薄手タイプがありますが、ロングライド時には暑さ3mm以上の厚手タイプのテープの使用がおすすめになります。
また、テープの素材も種類があるため、いくつかご紹介します。
柔らかくしっとりとした手触りが特徴。ビニールのような質感です。薄いですが、強度は高めですが、雨や手で濡れたりすると少し滑りやすくなります。
雨や汗で濡れても滑りにくいため、通勤・通学だけでなく、レースにも安心して使用できます。
合皮の一種で、さらさらした触り心地が特徴です。革のようなデザインが好きな方にもおすすめです。
テープの中にジェルが入っており、衝撃吸収性がかなり高いのが特徴です。他のタイプと比べると高価ではありますが、グリップ力も優れており、長距離の走行にもおすすめです。
バーテープは、カラーや柄などのバリエーションも豊富で、自分のバイクを好きにアレンジできるアクセサリーとしても人気です。素材だけでなく、デザインにもこだわってバーテープを選ぶのも良いでしょう。
DHバー(エアロバー)の装着は、メリットだけでなく、デメリットも存在します。まず、DHバーはブレーキを装着することができないため、走行中にブレーキをかける際は、いちいちブラケットに持ち変える必要があります。そのため、DHポジションは急なブレーキに対応することが難しくなります。また、DHバーを装着することにより、ハンドル周りが一気に重くなるため、ハンドリングが悪くなり、カーブも曲がりにくくなります。DHバーを使用して走行する際は、大きなケガや事故を防ぐためにも、車通りや人が多い場所、信号がある場所、市街地、下り坂では使用を控える必要があります。
ロードレースではDHバー(エアロバー)の使用が禁止されていますが、トライアスロンの大会ではドラフティングが禁止されている分、基本的にDHバーの使用は可能となっています。しかし、大会によって制限がかかる場合もあるため、参加予定の大会は必ず大会要項を確認し、DHバーの使用が可能かどうかをチェックするようにしましょう。
今回はDHバー(エアロバー)をご紹介させていただきましたが、いかがでしたか?
大事なポイントは
ということです。
トライスロンのバイク種目の象徴ともいえるDHバー(エアロバー)。レースでは最大限のパワーを発揮することができる重要なアイテムになるため、大会ごとに使い分けてみるのも良いかもしれません。